窓際?/はるな
 
方の壁は白く、たいてい家具や装飾は一切なかった。部屋の壁はすべて白い。わたしはそれを「灰色の部屋」と呼んだ。
灰色の部屋にはまれに窓やドアーが設置された。わたしは窓やドアーが設置されることを望んでいた。そうして、望みながら、それが適切ではない望みであるかのように思っていた。だからわたしの灰色の部屋には、たいていの場合窓もドアーもなかった。

あのころ、彼女とふたりで窓際に立っていたころ、遠さへの親和性を肌でかんじていたころ、灰色の部屋に閉じ込められていたころ、わたしと彼女は、たぶんドアーを必要としていた。必要としながら、拒絶していた。わたしたちの願望はほとんどの場合がはじめから破たんしていた
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