海岸図/天野茂典
 


 
 蕁草の茂みから
 ひろいあつめた言葉たちの匂い
 朽ちた戦車が砲弾を着装し
 森のかなたへ/詩人が放った
 焚き火のなかに原稿をほうりだすように/
 もう蛇は春から冬眠している
 北国の海岸では海上を兎がはしり
 沖をめざして競っている/
 眠れ兎
 音楽館では映画が上映されている/
 詩にならないことばについて
 ことばにならない詩について
 映画は無人ではじまったのだ
 始祖鳥が闖入する/
 バタ・バタ映像を遮断する
 猟銃で射殺するもはいない
 一滴の血/
 酸化する記号の謝肉祭
 蕁草の茂みから
 女がでてくる
 猪のように
 美し
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