窓際?/はるな
 
。カウンセリングルームの緑色のスリッパ、チョコレートやイチゴの匂いのするたばこ、真昼の河川敷、カッターと替え芯、うさぎの絵のパッケージのティシュー、袖の伸びきったカーディガン、露天で900円で買った合皮のバングル、それから彼女。
それらのものが大切だったし、まるで自分自身のようにちかしかったから、わたしはそれらを乱雑に扱うことができた。自分自身のように。

このあいだ、彼女に会ったとき、かなしくなることはない?私は聞いた。
以前のこと思い出して、かなしくなっちゃうことない?
すこしおいて彼女は言った、「そのときの状況がかなしいの?遠くまできたことが?」
そのとき、ああ、と思った。
わたしたちは少し似ている。だから親しい。わたしたちは遠くへきたかったのだ。あんな悪い状況のことを、少しでも少しでもはやく、忘れてしまいたかったのだ。
そうして、遠くへ来てしまえば、こんなにせつない。


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