『下弦の月』/あおい満月
夜のわたしは
太陽のうしろで一人
藍色の鏡を抱いて泣いている
眠るように
唄うように
仄かに輝くことしか
ゆるされないわたしは
信ずる者は望まない
猫のように
従順ではないものが好き
誰かがわたしを
刹那に輝くこの瞳を
歓喜してくれればいいのだ
永遠など
ことばにすれば
この躰のように溶けてゆくから
求めすぎない方がいい
光の中心ではなく
その周りで
ぼんやりと眺めているほうがいい
大きな幸せは
遠くから
手のひらで
あたためている方がいい
ちいさな花火のように
落ちないように
落ちることを
待っている方がいい
大切なものは
たったひとつの方がいい
いずれは消えてしまっても
記憶はたましいの中核に
深く深く刻まれる
叶うのならば
そういうものに
わたしはなりたい
二〇一〇年六月三〇日(水)
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