十三歳、/光井 新
 
うとする事に必死になれたんだ。眠る事よりも、食べる事よりも、魂を走らせる事に必死になって、ああ、生きて、生きて、僕もいつか……って。
 ねぇ、母さん、笑わないでね、僕、詩人になりたいんだ。才能は無いし、魔術師にはなれそうもないけれど、努力を重ねて、職人気質な詩を書きたいと思っているんだ。妖刀の艶は無くても、名も無い刀鍛冶が仕事をするみたいに、その鉄を、その魂を、一生懸命叩きたいんだ。ねぇ、母さん、泣かないで、ね、僕明日からまた学校に行こうと思うんだ、でもね、中学を卒業したら働こうと思う、そして自立して、ちょっとずつお金も貯めて、文学を勉強する為の専門学校に行こうと思うんだ、高校や大学じゃなくて。僕、詩の事だけを考えて生きていきたいんだ。この先どうなるかなんてわからないけど、恋もしたいとは思わないし、友達もいらない、家族もいらない、趣味とか娯楽とか、そういうのもいらない。僕の頭の中は詩でいっぱいで、それ以外他に何もいらないんだ。母さんから見たら寂しい人生かもしれないけど、ありがとう、母さん、生んでくれてありがとう。
 本当にありがとう。詩集、Amazonで注文するね。
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