繕いの午後/月乃助
の煙突は、すべてを見ながら
知らぬ顔をする だまされたなら
子どもの手を引く母親のしたたかな足取りさえも 暮らしの
もの悲しいあきらめの音をきざんでいる
自転車に乗った白いTシャツ姿の おさない少女の横を
たった今震える枝の葉の下で、赤い車が通り過ぎた
見上げれば、はしからはしまでの
羽衣の雲をまとった青空の嘘ばかり、それがために
手にした三つ葉のクローバーは、なくした一葉を捜しながら
ゼラニュームの赤い花に問いかける
落書きされた電柱の孤独に立つその影の中で、
時間がゆっくりと、たちどまるように
ため息をつくように
芝の上を、風が抜けていく
夏
凝視
私の時
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