繕いの午後/月乃助
 
六月の風
どこかにする
子どもの遊び声
落ちてくる手にあまる垂直な陽射しは、
すべての影を限りなく縮小し 見放し
あるがままの姿を投影してくれない
公園の木陰に一人ぽつねん
ベンチの女がくゆらす 消えていくたばこの煙
すべてを見つめ 目をそらさない
黒ぶちの犬の、そこだけは幸せそうな揺れる尻尾
真の自由を知ろうともしないくせに
日焼けした女の むき出しの痩せた肩に
すてられたラベンダーの花穂は、最後の芳香をはなち
あそこでは、主人を待ちのぞんむ緑の鉄製ベンチを
白い陽があざけるように焼いている
わずかなものを集めては、時を繕う午後
傾いた白い屋根に 煙のない煉瓦の煙
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