海の道 /服部 剛
 
ある夜、彼は夢を見た。 
無言で頭を垂らす、耶蘇は、云われた 
( 愛とは、十字架を背負うこと・・・ ) 

明け方、彼は浜辺に独り立ち 
足元に焼け焦げた、鳩の死骸を傍らに 
蛇の頭を素足で、踏みつける 
まりあ像の閉じた瞳を、思い浮かべた 

彼はもう一度、拳を握る。 
砂浜の底を、踏み締める。 
( 潮騒の音に、誘われながら・・・ ) 

私と、愛する妻と子が 
幾重もの波を貫いて 
水平線の先の「 遥かな国 」へ 
ひとすじの道を、歩めるように。 







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