揺れる/たちばなまこと
 
夕暮れ中央道にのり込んだ
明滅するテールランプが湿度ににじんで美しい
すべての初めては心を激しく呼んでくる
生きている
くるしいし高ぶるし泣きたくて笑いたい

センテンス
台詞たちがこびりついて
何度でも揺れられる

ターン
追えない背中たちを
見つめるだけの

負けゲームのやるせなさを逃がしてやりたい
初めての道初めての歌初めての夜の味
多摩川を鏡にして映る世田谷や狛江や調布が美しい
窓の外にもれる歌声と小さな寝息
土曜の日曜未満に皆が集い、帰り、街は静かに眠る
寂しさがエンジンブレーキのようにまとわりついて
また泣きたくて泣けなくて笑いたい

高ぶりで眠れない
どうか
おやすみ
おやすみ
おやすみ
自分の両腕を抱いて
おやすみ

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