ピチカカ反応/木屋 亞万
 
うです。やがて、すこし落ち着いたのか、体力を使い果たしたのか、かかとは相変わらず激しく地面に打ちつけているものの、転げまわるような動きはしないようになりました。もうしばらく経ったときに、最初に鳥を見つけた樵の男のかかとがピチッと裂け、そこからマリンブルーの卵が出てきたのです。残りの二人の男も、ピチッとかかとが裂け、そこからマリンブルーの卵がこぼれ出てきました。両足から卵が出てきたのですがマリンブルーでない方の白い卵は、それから何度新月を迎えても孵化しませんでした。このような話から、ピチカカと割れる鳥、ピチッとかかとが割れて生まれた鳥というようなことで、ピチカカ鳥と呼ばれるようになったのだそうです。ちなみに、通常の産卵ではピチカカ鳥は生涯に一つの卵しか産まないので増えることがないのですが、このお話が本当なら一羽から三羽の鳥に増やすことができます。しかし、ピチカカ鳥を知っている人は、大抵その由来も知っているので、自分の命を犠牲にしてまでこの鳥を増やそうと思う人はいないようです。ピチカカ鳥に夢中な人々は、ピチカカ反応といわれる未知の化学反応を解明することばかり考えているみたいです。
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