僕は妖精と会った/岡崎師
だけ見えていた。
僕はその星と、地上7階から見下ろす事の出来る景色を見比べながら左から聞こえてくる彼女の声に耳を澄ませる。
彼女がトイレに立っている間に、会計を済ませ僕らは帰る事にした。終電はとうに過ぎ、帰る方法はタクシーだけだった。
お店を出て、僕らはどの方向 を目指す訳でもなく歩き、言葉を交わすこともなかった。
タクシーを拾うこともせず、これからどうするかともお互い口にせずに、人通りの多い道を歩く。
数分歩いて、僕は彼女に家にこないかと、そう誘ったはずだ。彼女は頬に笑みを浮かべて、「はい」とちいさく頷いた。
一緒にタクシーに乗って、僕の家へと向かう。どちらからともなく手を繋いで、車は新道東へと向かった。車内は静かだった。
窓から流れる景色は、とても温度があるように、まるで魔法の時間を眺めているみたいだ。
やがて家へ着き、僕は鍵を開け、彼女を部屋へと誘った。口づけをして、魔法が切れていない事を僕らは確認しあった。
朝。目覚めると隣に彼女はいなかった。枕元にメモがあり、小さな整った字で、一言こう書かれていた。
「XXXXX?」
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