【句評】 天の川/銀上かもめ/古月
関節をすこしのばしてキスをした
一見、内容的にはとりたてて目新しさはないように思うが、「関節をのばす」という言語感覚は新鮮だった。
一般的に「〜〜をしてキスをした」の「〜〜」を埋めろと言われた時、背伸びや、爪先立ちのイメージといったものは比較的容易に出てくるだろう。だが、「間接をのばす」というのはなかなか出てこないのではないだろうか。
キスをした、という恋人同士の微笑ましい光景に、なんだか蛇のようなイメージが被ってきて、にゅるりとした微妙な気持ち悪さを感じる。
そして、その気持ち悪さは脳内で「キスをした」という言葉を多義的に変容させ、「キス」という軽い語感にもかかわらず、蛇の長い舌がちろちろと相手の舌に絡みついていくようなイメージを想起させる。
ポップなのにどこか陰のある、作者らしい句になっていると思う。
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