ヘル・ヘイ・ブン/影山影司
移動機関である電車をサービス器具に発展させたもので、日本国民もまた、この方法による死を好んでいる。日本国民を満載し、鈍重かつ豪速で進む『電車』の脚は屈強な鋼の車輪である。鋼の車輪は乱杭歯のような線路を深く噛み、ぎゅおんぎゅおんと唸りをあげて回転するのだ。そこへ身を投げれば、一秒とかからずに人体は粉砕、圧迫、分断、飛散、バラバラの身体となるのである。以前は飛び散った肉体が付近に居た人間に接触、悲惨な事故を招いたこともあったが、現在は同様の事件が起きないようにきちんと配慮されている。線路周りは耐久力に優れたラバーシールドに覆われており、ところどころで飛び降り孔、と呼ばれる入り口が設置されている。このラ
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