散らかして、片付けて/中原 那由多
億劫な時間に堕ちた鼻声
飲み忘れた風邪薬はじっと息を潜めていて
嫌なことばかりを思い出してしまう
咳払いをする度に捨てられてゆく羞恥心と
塵も積もれば山となりゆく倦怠
冷房の真下で居眠りすることに少し戸惑った
誰かのためにと始めた仕事は
いつか、自分のためとなっていて
道に迷って途方に暮れて
もと来た道を引き返す途中で見つけた
初心者マークのアイデンティティ
絆創膏を貼りたくて怪我をした膝小僧は
勝手にしろ、とそっぽむいていた
転た寝を誘う阪急電車
乗り過ごす手前で背伸びした
知らない場所を歩くことが
怖くて仕方がなかった霧雨の中
わずか七年で微かな面影、新京極
行き交う制服の数が増え
売れない木刀を見かけることは遂になかった
お菓子を食べるだけ食べて
歯磨きをせずに眠りにつく子供のような
無邪気でやんちゃなやりとりに
にやついてしまうことに理由などない
仮初めの達成感に騙されて
諦めることを諦めることにする
長いようで短い道を、短いようで長い世界を
あの電信柱まで、と進んでいく
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