紙上に佇む 痩せ細った枯れ木 磨り減ったペン先がつけた 掻き傷の隙間に 深く根を張るインクの滲み どこに行くとも なにを残すとも 示さぬままに 埋まってしまった行の終わりの 広がる凪いだ海へ 記憶の中の声 蠱惑に怯えながら 淡く燃え上がる色彩の灯を 手繰り寄せ 胸に抱けば ふるえる内接円から 微かに漏れる禁鳥の囀り 尖った八重歯が付けた 噛み傷の裂け目から 流れ出す深憂荒れる海へ 嗚、 薄霧を纏ってけぶる 仄白い弓張りの月が 夜の果ての出口のように まどろみの海に漂う 小さな舟を導く