いつかいつの日か、透明になる君に/梨玖
 
まだ固いスーツを初めて着た日は
苦笑いをしながら君に見せに行った
確かアザレアが咲く季節だった

明日から社会人だよ、と
半分不安めいた口調でそう言った
確か猫の恋が始まる季節だった



数十年ぶりに彗星が近づく夜は
君と一緒に空を見た
確か向日葵が咲く季節だった

仕事もうまくいきだしたんだ、と
半分得意げな口調でそう言った
確か南から風が吹く季節だった



年老いた猫が逝ってしまった日は
僕は一瞬自力で呼吸ができなくなってしまった
確か桔梗の花が咲く季節だった

だれかがしぬのはもういやだ、と
半分泣きそうな口調でそう言った
確か菊人形を
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