つまずき/小川麻由美
 
私は舗道を歩いていた
単衣の着物を着て楚々と振舞っていたが
思いがけずつまずいてしまった
犯人は舗道の下をうねる根っこ

照れのせいか上を見上げる私
思いがけず新緑のキラメキに時を忘れ
それこそ見事なツリー状のケヤキの
アポロ的な美に包まれ至福の感を味わう

私の足を掴んだ見えない根の居所
ディオニソス的なその地中は
私の想像もつかぬ決して見る事ができない世界
酒宴が繰り返されていることであろう

表面のアポロ的な美の結晶をたらしめているのは
恐るべき広がりを持つディオニソス
無意識を突きつけられた私は呆然と
ケヤキの根の盛り上がりに畏敬の念を抱く
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