私と子象/within
 
象が一匹いなくなった。いつも母象に寄り添
っていた子象がいなくなった。祖父の魂を斎
場から河原へと運びに行っているうちに、行
方が知れなくなった。魂の流れに誘われたの
だろうか。母象は何もなかったように、長い
鼻を宙に伸ばし、祖父の死を悼んでいる。友
達を失った私は、棒切れを片手に森の道を歩
いた。行き先については考えたくなかった。
隙間に入り込んでしまったなんて思いたくな
かった。青と黒で彩られた時間の停止する場
所に入ってしまったのかもしれないと思うと、
私は御飯も食べられなくなった。そのうち母
さんが心配し始めたので、私は父象の元を訪
ねた。

あきらめるな、隙
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