カバとキリカ/松本 涼
 
Z風に歌ってんのよ。」と言って続きをまた歌い出だした。
 ジリにはその歌が、まるでJAZZにも『池上線』にも聴こえなかったが、キリカがとても楽しそうに歌っていたので、敢えて何も言わないことにした。
 それからジリは、ご機嫌なキリカを部屋まで送り、キリカのアパートの下にとめてあった自転車で、自分の家まで帰った。

 部屋に帰ったジリは、冷蔵庫から冷えた麦茶をグラスに入れて飲み、服を着替えて布団に潜り込んだ。
 キリカはもう眠ったかな。今日はどんな時代に行っているのだろうとジリは思った。
 何にしてもいい時代だといい。
 温泉に浸かったカバのイビキを遠くに聞きながら、間も無くジリも眠りについた。

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