ジリとキリカ/松本 涼
ジリが山手通りを自転車で飛ばしている頃、キリカは水を張ったバスタブに腰まで浸かってぼんやり天井を見上げていた。
「ジリのヤツ遅いなあ。」
ジリは山手通りを右折して、かむろ坂を登り始めたところだった。
「あっつい!あっつい!」
八月ハ日晴れ。ジリのTシャツはすでに汗でびっしょりだった。坂を登って二つ目の角を曲がるとキリカのアパートが見えてくる。
喪服姿の集団が前からゾロゾロとやって来たので、ジリは自転車を降りて歩くことにした。近くに斎場があるため、この辺りに来るとよく喪服姿の人と擦れ違う。自転車を降りて歩くと更に熱い。
(キリカんちでシャワー浴びよう。)
ジリは自転車を引
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