行き先/within
羽虫の妖精が
肩にとまっていた
指で弾いて
空へ帰そうとしたけど
彼の眼は
地中に埋められた種を
見ていた
生も死も変わらないとしたら どうだろう?
透き通る陽気に
犯された
少女は
羽虫を潰した
残ったのは黒いみだらな点
屍を
汚れを落とすように
ハンカチで拭い取る
ハンカチに
さらわれた生命の残滓は
何も語らないが
奇跡の存在を
証明してくれている
まな板の上で
刻んでいる白菜も
骨になって沈黙している祖父も
同じなのではないかと
ぐつぐつと
煮える鍋の火を
落としながら思う
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