感傷/七氏
 
今朝、彼女の感傷が洗面台に溜まっていた
それは明らかに濃く濁っていて
底が見えないどころか
何色かもわからなかった
彼女がどこにそんなものを溜め込んでいたのか
考える気も起こらなかった

夜が更けてから
彼女はいつものように洗面台で顔を洗うと
そこに何本もの絵の具を溶かし
念入りにかき混ぜた
そして満足そうにそれを見ると
じっくりと目に涙を浮かべてから
滅茶苦茶に鏡を叩きはじめた

鏡は割れなかった
彼女はそれを明日からも使うからだ

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