GoodBye May/岡崎師
 
GoodBye May
          Tsukasa Okazaki

 窓から入り込む鈍い光が睫毛の上に乗って、爆ぜていた。あたしは、何度も瞬きを繰返して朝の角度を研究する。息を吐くとそれは白くて、部屋が寒いことを知った。
 部屋の暖房を点ける為に歩く、部屋に転がったピアスや酒はカーテンからの薄い光でキラキラと煌めいても、それを踏みつけて、髪をかき上げる。
 扉の向こうでは悪い事しか起こらないから、今日もあたしはこの部屋に籠もって文章を書き付ける作業を、そっと繰返す。繰返す。エンター。スペース。デリート。エンター、スペース、デリート。
「私も消えちゃえ」
 なんて、暖房が点いて、冷たい光に変わっていき、暖まってゆく部屋で私はこの小宇宙から抜け出す方法を考えている。両目を瞑ると暗闇に、六角形の結晶が静かに浮かび上がった。

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