ピティちゃん/salco
にとって死は最も忌諱すべき
現象であるから、温順この上ない屍もその点では脅威に他ならない。
間脳動物といわれる猫は、瀕死の同朋には決して近づかない。低体温の嬰
児の世話を母猫は放棄する。瞬時に生滅を嗅ぎ分けた後は、近づかないど
ころか徹底的にその個体を無視する。見ようとしないというより無存在を
遇するような、一瞥をもくれないその冷淡さは、この無邪気な小動物の脳
に生来組み込まれている死生認識の鉄則なのだ。
この避忌本能は人間も同じである。愛情という特異的盲執で強固に結ばれ
た「家族」という社会的最小単位の1歩外では、大脳新皮質自慢の我々に
もこの本能が有効に働く。直径5?の輪
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