未慣性モーメント/高梁サトル
 
時々歪んだ微笑み浮かべてる

砂漠の真ん中で階段が波打った
医者に「メニエール病」と診断された午後
先祖がえりした生き物と乾杯して

真昼の熱を包んだ夜風に癒される帰り道
いつの間にか私に覆い被さるように僕が
聖母のような微笑みで
時々鼓動と呼吸のリズムを外してる



直線 平面 三角 四角
好きなものを選んでいいはずだったのに
どれも手に馴染まないと言って
複雑な幾何学模様を選んだきみは
僕の一番古い記憶を再現していることに気付かない

あの頃の渦巻いていた何かがよみがえる予感
あんなに毎日一緒に食べたおにぎりの味を
きみは忘れてしまったのだろうか



無重力に放たれた未慣性モーメント

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