未慣性モーメント/高梁サトル
 
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不完全な過去 不確実な現在 無知な未来



カスタネットの赤と青が嫌だったから
いつも校庭のすみっこで地面に円を描いてた
繋ぎ目がゆるんで共鳴しなかったから
いつも答案用紙の上でシャープペンを回してた

あの頃は昼休みに僕が握ったおにぎりを
きみが「しょっぱい」と言って食べてくれれば
僕のなみだはきみの中で分解されて消えた



皮膚の断層の間に張り付いて剥がれない
幾重にも重なった自分を思い知る午前
セーラー服姿で教科書を焼き捨てて

真っ黒な炭が真っ白なリボンを汚す
いつの間にか私に塗り潰された僕が
息苦しそうに咳き込みながら
時々
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