教室/桐谷隼斗
 
机に沈み込んだ横顔
蛍光灯の光が彼女の髪を濡らす

黒板という舞台

踊り手
ほとんど白・大事な赤・時々青・見えない緑

語り手
怠惰な単語・疲労感を滲ませ・叱るのは簡単だ

観客
倦怠感を纏う集合 雷が学校を貫きすべて燃えればいいさ

ノートには 横顔 頬は熟れている
夏みかんの香りが鼻腔をくすぐり
恍惚に崩れ落ちる
長針はいつもより緩慢であり 僕たちを嘲笑うようである
窓ガラスの向こう側 海と工業地帯
煙突から吐き出されるものが人々の怠惰であることを僕たちは知っている
毎日絶望を廃棄し希望を吸い込もうと必死な 肺
傷口のアルバム いつの間にか開いてしまう
学校の焼却炉に焼かれた僕の点数
心にうず高く積もる 灰
いくつかの単語の呪い
それが 僕の睡魔か
彼女が黒板の踊りに翻弄されるころ
僕のため息は君の瞳へ
チャイムが響いた頃
雲から 遠鳴り
無意味な音節が街に轟く

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