フウイヌム/亜樹
しかし、馬の形をした下半身には鱗が生えている。薄い水色をした、美しい鱗である。
『彼女たち』は平和主義である。泉の甘い水を飲み、少々の果物と、魚を食べる。私はそのおこぼれに預かっている。
『彼女たち』は5日に一度の狩猟から帰ると、歌を歌う。
短調でも長調でもない、聞いたことのない歌である。
りりりりり、と硝子のような声で『彼女たち』は歌う。それ以外に声を発することはない。
こんなことを言えば、君は私の頭がおかしくなったと思うだろう。
しかし、事実だ。
私は、『彼女たち』を愛している。
私の体に鱗がないことが、足が2本しかないことが、指が5本もあることが、ただただ悲しい。
これは、仕方のないことだろう。
人の心は、多分不理解のものに出会ったとき、それを美しいと思うように出来ている。
この手紙が、君の町の浜辺に流れつくことを願って、ここに記す。
友人よ。私は生きている。
だから、どうか心配はしないでおくれ。
北の海に沈む夕日も、そちらと同じように、美しく、燃えているから。
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