虫取り網/小川麻由美
憂鬱さも手伝ってペンを持ちノートに向かう
何かが滲み出てくるようにペンはゆっくり動こうとするが
書き始めるきっかけとなった憂鬱さが
邪魔をし始めた
ぼやーっと壁に掛けた絵を観ていると
平面の世界であるはずの絵に描かれた
アゲハチョウが背景を捨てて
抜け出してくるように感じた
私は虫取り網を用意した
待てど暮らせど
アゲハチョウはピクリともしない
それは当たり前のことだと思いなおし
また文字をしたためることにした
なぜか進まぬペンを手にしたまま
またアゲハチョウを観る
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