フリースロー/桐谷隼斗
春に連行されます
籠から逸れた、いき方
春に連行されます
たおやかな影を纏い
籠から逸れた私を春は見逃さない
永遠、それは感覚を捨てること
研ぎ澄まされた、生きた感覚で《私》を放棄すること
飛行機雲のあちら側が、終わり
こちら側が、始まり
決めた
このフリースローを外したら、行こう
散らばる光、揺れる若葉
体育館に舞う、希望/絶望
ボールが沈黙の楽譜を演奏している
沈黙、希望でも絶望でもなく
それは祈り、誰かの誕生と同じように
頸動脈は春の大地に捧げよう
そういえば今日学校に来る途中の坂道で
訳もなく立ちすくんでしまった
今思えば、あれが終わりを意識した時だったんだ
あと、長針が2周したら行きます
鋭利な思いを刃に刻み
私は、うららかな、春に捕まった
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