鐘と棘/高梁サトル
 

空っぽの水瓶がひび割れる音がする
誇りを失ったその時は殺して
無様に誰かの足元に跪くことのないように

空想の純潔を
手折る薔薇を
遠視する愛を
合わせ鏡に映して

時々考える
至高の衝動のこと
私のこころはそこに凝縮されていて
それはまるで端正な花容のようで

脱ぎ捨てた服が
抜け殻のように
散らばっている部屋と
整然と並んだ玄関の靴

ひとつの救いは
「さようなら」も「こんにちは」も
繰り返されるやさしい言葉ということ

毎日早朝と夕暮れに鳴る
あの鐘の音のように
大体が狂いなく

私が棘を抜く時間に

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