書物の家/あおば
 
                 100519






満員電車で饅頭を運ぶときは
潰されないように気をつけなさい
あたりまえの注意を背に
饅頭を詰めた蒸籠を運ぶ

人でなしといわれようが
饅頭が大事と
二人分の席を確保したい
油断無く隙を窺いながら
ドアが開くと同時に飛び込んで
斜め前の席を確保する
二人前は無理で
身体の大きいのが割り込んできたから
饅頭入りの蒸籠が苦しそうな息を吐く
安全弁など無いから
限界を超えたら
蓋を持ち上げて
饅頭が丸い頭を覗かせるのが
目に見えるようだ
息を止めて
蒸籠が落ち着くのを待つうちに
電車は次第に
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