カニミソ/番田
わされてしまう。
真昼になったので、リールを巻きに港に戻った。穂先はそのままで、魚のかかっている様子などなかった。太った友達は退屈した様子で、ワゴンの奥の方から寝息を響かせていた。ドアは全開なので、風だけは涼しそうだ。
「ばかやろう」
縦筋の刻まれた買い物袋を鼻の穴にねじ込むと、堤防の先っぽに立ち、魚肉の塊の入った缶たちを投入していく。科学という、図書室の雑誌に書いてあったがままのやり方だ。蟹がかかれば、空っぽなこのバケツはにぎやかになることだろう。それ以上に、今晩もカニミソが並べられた食卓を想像するだけで、私の青い色のよだれは赤い色のバケツの中にこぼれ落ちそうだった。
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