よるにいない/しべ
ぽつりと兎
いびつなシルエット
雨水をくり貫いた一昨日から
恥ずかしい思いばかり
潰れた旅館の瓦礫をくべたのは
あのショベル あれが
やったんです
暗がりの冷たい埃や
月下はご覧のとおり
ふたつの
むきだしの人影が
酔眸で拐かしたくせに
ネオンの重い骨を睨む
生き残りの女衒
また川面を叩いて照らしているのか
コバルトの蛾を
パチっと殺して
まっ青
これだから夜はきれい
体液の流れとはまるで違う早天
弦が水を運ぶと星が
北と西に
よっつ
ひたひた
ふたつ
また ふたつ
死んでしまうその日まで
浮かんでいて
成田からの飛行機を天蓋につるし
造花のように思い出せば
雲を鳴らしたと言う
提灯浮かべば
川にさらさら
ほとばしれば
真っ黒
兎
携帯で撮ればよかったのに
そう言われたら
もう頷くしかない
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