非生存に思いをめぐらせて/石川敬大
 
 耳をそばだてることからはじまったはずだ


 そだってくる感情を聴いている
 風
 または風紋
 あるいは水の、波紋の
 パターン化した日常をなぞる
 と、読めてくる
 白骨の
 蔓の尖端の感覚もよみがえってくる


 だれもが帰るのだから
 寸前にどんな石を対置させても空しい


 秋びんを充填して
 春びんを解放して
 ぎりぎりの端の箸に立つ水として
 充溢感は満たされているだろうか

     *

 チンパンジーが
 沈む夕日をみていた
 その目は
 その表情は
 なぜか母性のように慈愛にみちていたのでR






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