ひなぎく/月乃助
忘れ去られた 古い校舎
人知れず
ひな菊が一面咲く
小さな 白い縁取りをした
数知れぬ麦藁帽子
花の絨毯は緑に抱かれ
さやかな風が吹き 過ぎる
もう夏の気配を孕んだ晩春のそれは、
無責任にあるものすべてを震わせたりする
冬のそれは、誰をもしばりつけるのに
もらった手紙を焼きました
一つの想いも残らぬように
あなたに会った必然を考えながら
誰にも信じてもらうこともない
二人が会わされた真理を
思い返しては、
ここでは、
春の陽気の微小な振動に
蜂たちばかりが呼応している
帰る道を確かめながら飛ぶそれは、
羽音ばかりがせわしない
すぐに手をつ
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