そのままの速さで/霜天
歩き方には拘らなかった
朝には優しさが満ちていた
音のならない靴をそろえて
こんなにも遠くへ来てしまった
人の道という、溜息の上澄みを掌でそっと掬うような、薄さ
踏みしめているようで、言葉さえ流れてしまう、深さ
そのままの速さで
あとどれだけの、指切りを、繰り返せば
気がつけば遠くなった
初めから近付いてもなかった、のかもしれない
謝る言葉は刺さらないので
繰り返し
繰り返す
明日は部屋にスイッチを作ろう
明滅する私であるなら
取り残されない、と祈りながら
ジグザグに
切り取られた心音を
海沿いのカーブから空の方へ投げる
そのままの速さで
左に、逸れる
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