折鶴の少女/くろきた
 
平和を重んじる所に生まれ

平和を重んじる所で育った

平和を重んじる学びを受け

平和を重んじよと教え込まれた


毎年夏には資料館へおもむき

数々の遺品や写真を見て

戦争に対する作文を書けと言われた


いつしか私は

折鶴を折るのが苦手になった

折ると瞼に浮かぶあの少女

いつの日からかすっかり

折鶴を折らなくなった


ある日ふと思いたって

折鶴を折ってみた

やっぱり浮かぶあの少女

くるしい、と思った


だけど


こういう「きっかけ」が消えた日に

世界が戦火に飲込まれるのだろうと

おもった









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