手紙/高梁サトル
 
手も足も心臓も同じように生された私たちが争い殺しあって何になりましょう。
これまでの私は耳触りのよい正論だけでつくった衣を羽織り、
怖がりな自分を了見の狭い幸福で包み隠していただけだったのかもしれません。

それももうやめます。』



私はあなたの凱旋をエーゲ海岸で毎日待ちわびました。
そしてそこにある日見えた、はためく黒い帆…
それを見た瞬間私はこの身を深海へと沈めたのです。
もう二度とあなたの体躯を抱き締めることがかなわないと感じた時の私の狂乱…
けれど、あれは金曜の晩だった、
金曜の晩だったのですね…

別れというものは、こんな些細なすれ違いです。
だから、もう気に病まずにお行きなさい。

あなたは愛する者にも愛される者にも恵まれることでしょう。
豊饒の女神フレイヤが付いているのですから。

いつでもこころはあなたの傍に。
あいしています。

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