薄暮/within
必要とされた彼の通過してきた時間が、彼に染み付いていた。
そうして切り分けたハッサクを皿に盛り、テーブルの上に置いた。もう長くない。しかし明日突然終わることなどということは考えにくかった。定期の訪問看護によるメディカルチェックでもB+の判定を受けていた。血管も内臓も彼の年齢からすれば、比較的、優秀な肉体を保持していた。同じ年齢でも、すでに幹細胞培養による器官移植を受けている者が多数を占めているなかで、経済的余裕もなかったが、彼は原身体で生き続けていた。
メイドの声がした。
「そろそろお湯が入りました」
耳ざわりの良い彼女の声は、彼の思い出のなかから抽出されたものだった。
彼は床に
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