神について/中村 拓人
◎
ある日
目がさめると、ぼくがぼくの部屋の窓辺から
こっちを見ていた。
やあ―窓辺のぼくがそういうと
ぼくはぼく自身に血が注がれるのを感じた
ぼくはぼくと朝食を食べた
皿の上にブドウの種を並べていった
すべてが完璧な朝だった
ぼくとぼくは靴を履いていなかった
恋人は
ぼくたちに会うと(うれしいとも悲しいとも言わず)
涙を流してくれた
そして、ぼくがぼくの名を忘れると
しだいに街中の人たちは影を失ってしまった
TVは
うつらなくなっていた。ただぼんやりとぼくたちの影が
うつっていた
やあ―TVにむかってそういうと
ぼくも恋人も少しずつ言葉を忘れは
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