午後/榊 慧
 
ながらくじくんは自分で一週間前くらいに作ったクラッカーを咀嚼する。そして甘くない(無糖。)紅茶を飲む。「コーヒーよりカフェインの量が多いから」らしい、多いから何なんだろうねと鈴木さんが言っていた。それを聞いてくじくんが彼女に怒鳴ったのは割と最近だ。(「経済的だろう!」と真剣に怒っていた。至極どうでもいい。)
「くじくん」
「なに」
「シチュー作ってきたんだけど」
「白いやつ?」
「クリーム色かな」
「よっしゃ、明日とびきりの…なんだっけ、シチュー入れたやつをパイ生地で覆って焼くやつ、あれ作って持っていこうぜ」
くじくんが下げられている目線を殆ど動かさずに言う。目線は進行形で焼かれてい
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