閃篇Ω ちょっとSM/佐々宝砂
 
りこもうと口を開く男がいて、私はとまどった。普通とまどうだろう。羞恥ではない透明な次元で男は私を抱いた。その愛を受けることが私にはできかねた。愛は昇華していった、触れぬ次元に立ち上る悪臭を私は観察するしかなかった。

***

炭をばりばりと食うので歯はすり減ってしまったし唇はしょっちゅう真っ黒だ。そんな私を彼は怒るのだけど彼は真夜中に紙を貪っている。知らないふりしてあげて黒い唇でキスすれば唾液にパルプの繊維が混じっている。生物としての本能も忘れた私たちにまだ残る本能を生かして遊ぼう。

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あのひとの指があのこの首をなぞる。汗。誰の汗かわからない。すき。誰が誰を。ここに一人
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