春のない国/
高梁サトル
泣いたり喚いたりすることに
何の浄化作用があるのだろうか
僕の愛する人は
涙も見せず
痛いとも言わず
ただ静かに窓の外を見詰めて
もうすぐ春だね、と微笑んでいた
少し早い誕生日ケーキを
水さえ吐き出してしまう口にほうばって
甘いなあ、と微笑んでいた
僕はそれから
自分が泣くことが許せない
春のない国へ行きたい
きみがいけなかった
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