霧のみち/しべ
 
虫だ

まるで
飛散する影みたい

なにかが 高架橋から
手を差し伸べる
亡霊の
薄水色の


枯れた枝だ


ピントのずれた
ミズドリの
滞空する世界

その小さな染みの
羽ばたきの

糸で

ゆったり
たちのぼり

滲んだっきり
浮力をふらふらほつれさせ
持て余す

葦の鞭毛を超え
嘴を西へ返し

二月から風に
たゆたう
利根川へ

滴った躯を
黒い小波にかえて

高圧線鉄塔の
痩せたツツジの赤に
染められて



雨雲を寄越せ

遠近感を断ち
垂れ込めた
空に溶けて しまえ


重なる色
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