ハンチング/あおば
爆撃機が住みついた環境の悪い右耳は配給の1斤の食パンを求めておずおずと差し出す小さな手のひらでは金蠅と銀蠅が喧嘩して日の光を独占しているのだが、藤棚から垂れ下がる可憐な紫の花びらを眺め
柏餅を頬張る意地汚い観光客は
火の見櫓の下に整列させられ
半焼で耳を焼かれ
頭から竜吐水を浴びせられ
ナパーム弾で焼かれた家の跡で転げ回って復讐を誓ったのを忘れ
大型連休の手羽締めに舌鼓
鬼怒川に架かった橋から蛤のように華麗なダイビング
浅蜊を掘るプラスチック製の熊手を干潟に忘れたのを
10年後に思いだすのを商売とする
小さなことを失念すると
いつかは巨大なブラックホールに吸い込まれると
10年単位で記録するのにも飽きた
横書きで横着な野生復帰を願うハンチング
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