白い言葉/窪ワタル
晴れた空は、あまりに眩しくきれいだ
幼い頃、一番欲しいものはなあに?と問われて
そら とは答えられず
むきかごーぶつ と答えた
(空は大きすぎて僕のおもちゃ箱には入らないとわかっていたから)
むきかごーぶつになりたい
その、透明な産毛のような、拙く、だが尊大な夢が
空を手に入れるのと同じくらい、無謀だと知ったのは
小学校の理科でのこと
「人間は有機化合物です。」
と、先生は事も無げに云った
なぜ無機化合物だったかと云えば
その頃近くに住んでいたヒロコさんが、無機化合物の研究を志して
遠くの大学へ行ってしまったからだった
一度だけ僕宛の年賀状が届いた
ちゃん
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