円盤の空/番田
向かったものだった。無い金を二人して出しあって、ボートに乗る岸辺に繰り出していった。オールを漕いでもなかなか進まない船体に、いつかはエンジンを使った波に乗りたいものだと思っていた。そんなふうに船はふらふらとしたままなかなか後方にすら進まなかった。
話しは変わるけれども最近、私の体は仕事によって元気になってきた。こんな風にしてぼろぼろに疲れ果てるたびに、アメリカという国のすべてを否定したくなるから。それに私は派遣の人間だ。アルバイトには表面上ではバカ丁寧な対応をされてはが、実際はこき使われている身分である。給料が高いうえに、ロクな頭も必要とされることのないクソ仕事ばかりしているのだ。そんなようなことを30代や40代にわたって延々と続けさせられることを想像すると、たぶん大変なことになってしまうだろうことは間違いない。いつも足下に金目のものが落ちていないので、どぶを睨み付けながら歩いている。時々、遠くに銀色のものを見かけるが、それは金の円盤だったり、カジノ用のステッキだったりする。そんなものを握りしめてバッと掲げ上げるたびに、浮浪者になっている自分を未来に想像するのである。
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