メーデー/salco
向こうに謎めいた恐怖政治を敷く「悪の枢軸」と思
われた。
スターリン時代から続く思想弾圧は西側へ伝えられて久しく、物資の恒常
的不足と共にKGBの暗躍と人権蹂躙の実態は続々と亡命する文学者、芸
術家、科学者らによって証言されていたにも関わらず、そんな中でも父は
頑強に共産主義を翼賛し続けていた。
既に巨大な枢軸を取り巻く同盟国の中では20年後に向けゆっくりと瓦解
しつつあった政治体制は、ボルシェビキのロシア革命に対するロマン同様
、父にとっては郷愁に等しくセルフ・アイデンティティーに深く結びつい
ていた為に現実を直視し得なかったのだろうか、西側ジャーナリズムが日
々伝えるその内
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