メーデー/salco
私に似て、いや私が父に似ているのだが自意識過剰だった
のだろう。言わずもがな音楽は耳と心で聴くもので、これ見よがしのイデ
オロギーなど音響を伝える針にもならぬどころか審美眼を狂わせる弊害で
しかない。寧ろ父がごくたまに古いソニーのオープン・リールで聴いてい
たロシア民謡の方が、CCCPを超越した民衆的哀愁に於いて琴線に触れ
るインテルナシオナァルだったに違いないのだ。
しかし父も懲りない人だった。若き日にマルクスやレーニンの著作をどれ
ほど読解する知力・忍耐力を有していたのかは知らないが、小林多喜二を
敬慕してやまない読書傾向そのままに、ある年ソヴィエト連邦の成立に関
する本
[次のページ]
戻る 編 削 Point(14)